フォーマットどおりに出した報告書
週に一度の報告書は、
去年からずっと同じフォーマットです。
今週も、その通りに数字を並べていきます。
ふと、もう少し伝わる書き方がある気がしました。
グラフの並べ方を変えて、
先に結論を書いてみたら、どうだろう。
口に出す前に、頭の中で声が聞こえます。
「それ、今のやり方と比べて、何の役に立つの?」
うまく答えられる気がしない。
だから、いつも通りに作って、提出してしまう。
面白そうだと思ったことを、
「役に立つかどうか」で先に閉じてしまう。
そんな場面に、心当たりはありませんか。

「変な京大」というセッション
先日、ITmediaのオルタナティブ・ブログで、
本荘修二さんの記事を読みました。
「『役に立たない』がイノベーションを生む? G1『変な京大』に学ぶ、外れ値の育て方」
(ITmedia オルタナティブ・ブログ、2026年9月24日公表)
https://blogs.itmedia.co.jp/honjo/2026/09/g1.html
2026年9月12日の「G1関西」で開かれた、
「『変な京大』 なぜ京都大学から多様な知が生まれ続けるのか」
というセッションの報告です。
モデレーターは、マネーフォワードの辻庸介さん。
登壇したのは、
京都大学で仏教を研究する熊谷誠慈教授、
参議院議員の新実彰平さん、
超ひも理論の研究者である橋本幸士教授、
ビットキーCEOの寳槻昌則さんです。
まず出てきたのが、新実さんの話でした。
「野球がしたい」という理由だけで、
死ぬ気で勉強して京大に入ったそうです。
辻さんの反応は「野球のために京大!?」。
熊谷教授は、朝9時から翌朝5時まで、
サンスクリット語の古文書を読み解く日々を送っていました。
「壁にぶつかるどころか、壁しかない」状況でも、
原典に触れるのが楽しくてしょうがなかったそうです。
研究対象を絞るうちに、
その分野の研究者は世界で自分一人に。
周りからは「そんな研究をして何の役に立つんですか」と
言われ続けたといいます。
その研究は、のちにブータン国王との出会いなどを経て、
仏教AI「ブッダボット」の開発へつながっていきます。
橋本教授は、「物理を音楽にしたら面白そう」から、
音楽家と「物理に基づいた交響曲」を作曲しました。
演奏したドイツの高校生たちは、
物理学の平和利用を込めた曲だと聞いて、
感動して泣き出したそうです。
「お前、変人やな」が褒め言葉になる研究室
橋本教授の研究室では、学生が失敗をしたとき、
こう受け止めるそうです。
「どんだけすごい失敗したんか言うてみ」
その失敗がすごければすごいほど、
「お前、変人やな」となる。
これが、褒め言葉なのだそうです。
寳槻さんは、「変であることを許容する環境」が
大事だと話していました。
京都大学では「変だ」と言われること自体が、
むしろ少し嬉しいのだとか。
「変なやつに居場所がある。
変な状態でも目的や計画を強制されないことが大きい」
セッションの最後に、辻さんはこう語りました。
「人は一人ひとり個性を持ってよくて、
興味あることを深掘りしながら、役に立たなくてもいい」
そして記事の結びで、本荘さんはこう書いています。
「『変な人』をつくるのではなく、『変なままでいられる場所』をつくる。」
ここで語られているのは、
研究者や経営者の話です。
同じことが、そのまま
どの職場にも当てはまるとは限りません。
ここまでが、ITmediaの本荘修二さんの記事に書かれていたことです。ここからは、これを読んで僕が考えたことです。
型に入れた瞬間に逃げていくもの
「目的や計画を強制されない」という言葉で、
思い出したことがあります。
僕は、読書感想文を書くのが
嫌で嫌でたまりませんでした。
毎年提出せず、先生に何度も叱られました。
本を読むこと自体は、好きだったんです。
嫌だったのは、読んだあとに、
決められた形で出すことでした。
原稿用紙3枚。
あらすじを書いて、感想を書いて、
これからどうするかで締める。
あの形に入れようとした瞬間、
読んでいたときの感じが、するりと逃げていく。
面白がっていたものは、
「何のために」を先に決められると、
居場所をなくすのかもしれません。
やらされ業務をチャレンジゲームにしたころ

サラリーマン時代、
やらされていると思う業務は多くありました。
それでも業務なので、やらないわけにはいきません。
そこで、開き直りました。
だったら、自分がやりたいように進めよう。
この業務で、自分のどんな能力を活かせるのか。
どんなふうに成長できるのか。
このチャレンジゲームを超えたら、
どんな自分になっているのか。
そんなことを考えながら、
自分なりの進め方でやってみました。
周りの冷ややかな目は、気にしませんでした。
仕事そのものは、変えていません。
変えたのは、仕事の見方でした。
いま思えば、あれは、
与えられた仕事の中に
「変なままでいられる場所」を
自分で一つ作っていたのだと思います。
仕事の中に場所を作る3つの手順
職場のルールや、決められたフォーマットは、
すぐには変えられないかもしれません。
それでも、その中に場所を作ることはできます。
① 自分が面白がっていることに気づく
最初は、自分が何を面白がっているかに
気づくところからです。
誰にも頼まれていないのに、
ついやってしまうこと。
気づくと時間を忘れていること。
冒頭の報告書なら、
「もう少し伝わる書き方がある気がした」。
それだけでも、十分な手がかりです。
② 与えられた枠の中に、自分の遊び場を一つ作る
次に、仕事の中身やフォーマットはそのままで、
自分なりの進め方を一つだけ混ぜてみます。
この仕事で、自分のどんな力を試せるか。
やり終えたら、どんな自分になっていたいか。
そんなふうに、自分に向けたゲームにしてみる。
周りに説明できなくても、かまいません。
「目的や計画を強制されない」小さな場所を、
自分の中に一つ持つだけです。
③ 誰かの「変」を面白がる一言を持っておく
場所は、自分のためだけのものでなくてもいい。
同僚が、役に立ちそうもない話を始めたとき。
誰かが、思い切り失敗して落ち込んでいるとき。
「それ、面白いですね」
「どんだけすごい失敗したんか、聞かせてください」
そんな一言が、相手にとっての
「変なままでいられる場所」になるかもしれません。
報告書の続き
来週も、同じフォーマットの報告書が
やってくるかもしれません。
そのとき、グラフの並べ方を一つだけ変えてみる。
隣の席の誰かの「変な思いつき」を、
一度だけ面白がってみる。
変なままでいられる場所は、
大きな会社の制度でなくても、
一人の見方と、一言から作れると思っています。
あなたの仕事の中で、
変なままでいられる場所は、どこにありますか。

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